『住まいの語録』

2012年5月25日 金曜日

1.四神相応の地~駅から十分

 住まいづくりは敷地さがしから始まる。駅から十分と書かれてあっても、当用漢字では充分を十分と書くので、十分間のことか、自分の足で充分に確かめる必要がある。公正取引規約では1分を80mに換算する。
 不動産周旋業(注1)のことを千三つという。相談のまとまるのは千に三口くらいのものという意味だが、同時に千に三つほどの真実しかないという意味にもなっている。海千山千にはかなわない。万三つとか、万八ともいう。免許取消しの例で、150万刷った散らし広告の、駅から13分が、実は80kmだったという。看板にいつわりあり見ると聞くとは大違い、そして百聞は一見にしかずである。
 敷地を見に行くときは、それこそ実地検分、現場検証の心構えがいる。
 敷地の実感を味わうにしても、漫然と無駄足を運ぶわけにはいかない。まず、地番入り案内図と測量のコピーを用意し、役所に寄って用途規制図で建築条件を確かめる。(注2)敷地図は測量士事務所に依頼して作成した青図で、高低差も明示し、等高線(コンター)が入っているとよい。何枚かのコピーを現地での書き込み用にする。
 現場には設備の専門家を伴って、埋設してある給水やガス管の位置・サイズ・水圧、それから排水溝の経路と下水本管・枡の位置と高さ、必要なら200V用、電話柱なども確かめたい。(注3)僻地では浄化槽のやり方、高台では水圧が夏の渇水期にどうか、隣近所の聞き込みも必要だ。寒冷地では凍上(地面が凍って建物を持ち上げる)と不凍栓設置の深さを、多雪地では積雪量を確かめておく。馴染のない地域では、民家のたたずまいとか人々の暮らし方などの一般的居住方法の中に、デザインの秘訣をかぐこともできる。
 設計者は、方位を確かめながら敷地全体の状況を把握し、隣地境界線を土地所有者との立ち合いで確かめ合い、必要なら巻尺で当たる。眺望がよいと風当たりも強い。隣地関係・敷地内外の雨排水の方向・地質・井戸・立ち木の位置等樹種・四季の変化など、メモとスケッチは多いほどよかろう。カメラを構えるとき、何となくでなく、どこから何を何のために撮るか決心してから撮らないと役に立たない。
 まだまだチェックポイントに限りがないから、その都度必要に応じたチェックリストを準備するのが一番よい。今までにも何回か、チェックポイントを整理して、いつでも使えるリストを作ったことがあるが、逆にリストに頼って形式的な調査になってしまう恐れのあることがわかった。
 お天気の悪い時こそ、よく敷地を理解できるというもの。設計者は施主との立ち話に夢中になって必要な調査を度忘れしないように。建築業者がいるときは、調査を手伝ってもらうのも意志の疎通になる。
 計画ができてから現地へ行く時も、確かめたいことのメモを作って行かぬとうっかり見落とす。
(茶谷正洋『すまいの語録』より抜粋)

注1:不動産斡旋業、仲介業のこと。
注2:地番入りの案内図は地図専門業者作成の地域地図にある。有料地図サイトで入手もできる。法務局で調査可能。過去に食糧図が登記されていれば法務局で「地積測量図」を有料で入手できる。インターネットの登記情報サービスは登録制。都市計画などの規制は行政によってはインターネットで無料で入手できる。数種類の地域に含まれる場合には行政窓口などで確認を取ること。建築局の都市計画課、建築指導課など行政によって窓口が異なる場合がある。
注3:行政の水道局、下水道課、土木事務所、ガス会社で各引き込み位置が確認できる図がある。

投稿者 目黒区の一級建築士事務所オリガミックアーキテクチャー

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